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306件
――崩れるものの上で、人はなお安らぎを探す―― 四人で読む、物語の奥行き① 方丈記
今回扱う作品の一言紹介 『方丈記』は、災害や都の変化を通して、住まいも暮らしも心も、同じ形では残らないことを見つめた随筆です。 作者は鴨長明。 鎌倉時代前期に書かれた、短いけれど深い古典です。 有名な書き出しでは、川の流れと水の泡を手がかりに、世の中の移り変わりが語られます。 川は流れ続けているように見える。 けれど、そこを流れる水は、同じものではありません…
m45010b8dac3f四人で読む、物語の奥行き
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THE OBSERVER 第6話 並ぶ
その光は、最後まで何もしなかった。 数ヶ月が過ぎた。 白峰市は、以前よりさらに静かな街になっていた。 事故は減った。 怒鳴り声は減った。 会議は短くなり、結論は早く出るようになった。 FLOWは、今では特別なものではない。 強制ではない。 それでも、多くの人が自然に選んでいる。 便利だから。 楽だから。 穏やかでいられるから。 それは、間違いではなかった。 …
THE OBSERVER
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THE OBSERVER 第5話 観察される自由
名前をつけた瞬間に、人は少し安心してしまう。 黒崎玲は、空の白い光に名前をつけなかった。 UFOとも言わない。 宇宙人とも言わない。 神とも言わない。 ただ、光。 それ以上でも、それ以下でもない。 中央区の会議室は、今日も静かだった。 資料は整理され、意見は要点だけが残り、 言葉は最短距離で交わされる。 白峰市は整ってきている。 事故は減り、衝突は減り、結論…
THE OBSERVER
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THE OBSERVER 第4話 見捨てない
整うことは、間違いではなかった。 夜は、前よりよく眠れる。 紫藤澪は、それを素直に良いことだと思っている。 以前は違った。 配信を終えたあとも頭の中のざわつきが消えず、 誰かの何気ない一言が長く残り、 眠る直前までコメント欄を見返してしまうこともあった。 今は、そこまで引きずらない。 FLOWは感情を消すわけではない。 悲しいときは悲しいし、腹が立つときは立…
THE OBSERVER
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THE OBSERVER 第3話 干渉しない
その光は、助けなかった。 夕方の交差点だった。 雨はもう止んでいたが、路面にはまだ薄く水が残っている。 白峰市では珍しくもない、少し滑りやすい夕暮れだった。 信号が変わる。 歩行者が動き出す。 車が進む。 その一瞬だけ、いくつかの判断が重なった。 右折しようとした車。 横断歩道に踏み出した人。 確認が、ほんの少し遅れる。 ブレーキ音がした。 短く、鋭く。 空…
THE OBSERVER
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THE OBSERVER 第2話 記録される街
その光は、騒がれなかった。 一般に確認できる記録として最初に残ったのは、夜景を撮った短い投稿だった。 中央区のビル群の上に、白い点が映っていた。 深夜二時十七分。 三秒ほど。 飛行機ではない。 ドローンでもない。 レンズの反射とも少し違う。 ただ、高い位置に、白い光があった。 同じ時刻、中央区の定点カメラにも似た光が残っていたらしい。 ただし、その映像が外へ…
THE OBSERVER
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THE OBSERVER 第1話 浮いていた日
その光は、何もしなかった。 少なくとも、誰かを傷つけたわけではない。 何かを壊したわけでもない。 それとは別に、街は少しずつ整っていた。 事故は減った。 怒鳴り声も減った。 会議は短くなり、結論は早く出る。 それは、良いことだった。 白峰市は、以前より静かな街になっていた。 感情安定・行動補助アプリ「FLOW」は、今では珍しいものではない。 強制ではない。 …
THE OBSERVER
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アークシティ観光案内
ようこそ、アークシティへ。 上から見れば整った未来都市。けれど、降りて歩くと、この街は少し違って見えてきます。 今回は黒崎玲と紫藤澪の二人に、この街を案内してもらいます。 澪「ようこそ、アークシティへ。今日は私たちが案内するね」 玲「黒崎玲です。少し歩きますが、その分、この街の輪郭はよく見えるはずです」 澪「私は紫藤澪。玲は街の骨組みを見るのが得意で、私はそ…
アークシティ短編集
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 最終話 揺らぎを背負う
街の隔離が解かれる。 澪の指が、最後のキーを押した。 止められていた流れが、ゆっくりと戻り始める。 閉じられていた道がひらき、人の移動が再開する。 街は再び、人の気配を取り戻していった。 同時に、都市演算の揺れが走る。 制御の再編を示す警告が、管理ホールの各所に点った。 仁が低く言う。 「お前は都市を危険にした」 玲はスクリーンの向こうに広がる街を見つめたま…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第7話 制限の街で、誰を守るのか
港湾区からネオン地区にかけて、人の流れが少しずつ外へ押し出されていく。 事故を防ぐための制限は、やがて暮らしそのものの形を変えはじめる。 そのとき問われるのは、都市を守ることと、人を消さないことが本当に両立できるのか、という一点だった。 澪が言う。 「これ、隔離に近い」 仁は答える。 「危険を削っている」 玲はスクリーンに映る街を見ていた。 そこには無数の生…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第6話 都市は誰を守るのか
異常は、静かに始まった。 都市の表示は安定を示している。 だが、実際の運用ラインは、目に見えないほどわずかに歪んでいた。 澪が言う。 「調整が早すぎる」 玲は画面を見つめたまま、低く返す。 「都市が、先に決めている」 その直後、警告音が走った。 交通。電力。通信。 あらゆる流れが、示し合わせたように変わっていく。 仁が言った。 「都市は守る」 玲は静かに問う…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第5話 一つの都市に、三つの正しさ
仁は、第七区画のことを詳しく語らない。 語れば、切り離したはずの時間が、自分の中でまた動き出すからだ。 それでも、彼の結論だけは変わらない。 「削る」 玲は受け止めるように言う。 「背負う」 澪は二人のあいだで、その言葉を聞いていた。 制度でも理念でもなく、壊れた現場に触れてきた者の位置から。 「ねえ。都市を守るって、何を守ること?」 仁は答える。 「存続だ…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第4話 境界は誰が決めるのか
都市は、すべてを安全にはできない。 だから境界を置く。 問題は、その境界が誰のためのものなのかだった。 重力炉管理ホールで、仁が権限を通した。 閉じられていた深層ログの一部が、静かに開く。 澪は息を呑んだ。 画面に浮かんでいたのは、単なる運用記録ではない。 都市の判断を支える、ひとつの概念だった。 境界。 都市は、あらゆる危険をゼロにはできない。 だから、ど…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第3話 記録が綺麗すぎる夜
港湾区で、澪は違和感を拾った。 交換されたはずの部品が、交換されたように見える痕跡だけを残して、不自然に収まっていた。 作業ログは揃っている。 だが、現物だけが別のことを語っている。 「記録が綺麗すぎる」 澪はつぶやいた。 現場は、こんなふうに綺麗にはならない。 人が触れば、必ず少し汚れる。 少し迷う。 少し手間取る。 そこに現実が残る。 なのに、ここには人…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第2話 第七区画は、まだ終わっていない
地下は静かだった。 静かすぎて、ここでは人の痛みまで記録に変わってしまいそうだった。 重力炉管理ホールの前で、二人を待っていた男がいる。 火守仁。 基幹評議会管轄、危険区画対策室の上級執行調整官。 背筋はまっすぐで、動きに無駄がない。 そこに立っているだけで、これ以上は進ませない、と言っているようだった。 「監査官」 低い声が、玲に向けられる。 敬意でもあり…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Civil Threshold 第1話 壊れるときは、静かだ
壊れるときは、静かだ。 アークシティは今夜も整っていた。 整いすぎていて、その奥に残ったごく小さな揺れだけが、かえって沈んで見えた。 黒崎玲は、それを見落とさなかった。 港湾区の灯りが海面に落ち、空中レーンをエアロシャトルが規則正しく流れていく。 都市は静かで、正確で、乱れがない。 アークシティの夜は、いつ見ても美しい。 無駄を削ぎ落とし、迷いさえ吸い込むよ…
Civil Threshold
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0)BLACK VELOCITY: Civil Threshold
都市が人を守るのか。 それとも、人を守るために都市があるのか。 『BLACK VELOCITY: Civil Threshold』は、 その見えない境界を描く物語です。 アークシティは、 事故を限りなく減らすために設計された実験都市です。 海沿いに築かれた巨大な街では、 交通、エネルギー、物流、通信といった都市の根幹が、 統合されたシステムによって静かに管理…
Civil Threshold
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BLACK VELOCITY: Fluctuation
アークシティは、完璧に近い都市だった。 事故も無駄も減らすために、あらゆる判断が静かに整えられている。 信号は正確だ。 人の流れは滑らかだ。 高架道路を走る車列は、線を引いたように乱れない。 誰かが困る前に調整される。 事故になる前に修正される。 それはたしかに、ひとつの理想だった。 けれど、その正しさが行き届きすぎたとき、街は少しずつ別のものも削っていく。…
SHADOW & NEON
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