OFFICIAL ARCHIVE / BLACK VELOCITY

アーカイブカテゴリ: アークシティ暦片

BLACK VELOCITYの舞台・アークシティで綴る、「今日は何の日」の掌編連載です。 史実や記念日を作中へそのまま置き換えるのではなく、その日に残された問いだけを受け取り、一人の人物、一つの場所、一度の判断へ落とし込みます。 記憶、境界、責任、帰る道――都市の片隅で誰かが何を守り、何を背負ったのか。現実と物語を切り分けながら、「人を記録の外へ落とさない」ための静かな暦を綴ります。

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UPDATE 8月25日|お湯がなければ、一食に数えない 居住基盤区の避難区画には、四十八時間分の食料が保管されていた。 火守仁は、避難後も受け入れを続けられる時間を確認していた。 保管画面では、必要な食数を満たしている。 その多くは、湯を注げば短時間で食べられる保存食だった。 軽く、長く置けて、… 読む UPDATE 8月24日|呼び方が変わっても、契約は消えない 行政監査区の執務室で、黒崎玲は保守契約の変更案を開いた。 対象は、居住基盤区で使われている換気設備だった。 都市は保守会社と契約し、設置済みの設備を契約終了日まで点検、修理させている。 保守会社は今回、製造と部品供給が終わった型式を、管理上… 読む UPDATE 8月23日|一枚の写真では、街の暮らしは見えない 都市観測解析室へ、広報用画像の確認依頼が届いた。 添付されていたのは、定期観測で撮影されたアークドームの広域画像だった。 アークドームを外から撮った画像は、以前から何枚もある。 今回の画像はいつもより遠い位置から撮影され、ドームだけでなく、… 読む UPDATE 8月22日|助ける道は、誰にも使わせない 基幹保全点検日の前夜、紫藤澪は都市システム保守課で作業導線を確認していた。 翌日は、複数の区画で設備を順番に止める。 停止中も街の生活を守るため、作業車、交換部品、保守員を決められた通路へ振り分けなければならない。 画面には、一本だけ何も割… 読む UPDATE 8月21日|ひとつになっても、違いは消さない 都市観測解析室で、赤嶺凪は翌朝に公開する資料を確認していた。 画面には、アークシティ全体の平均待ち時間が表示されている。 エアロシャトルの停留所。 医療窓口。 生活基盤設備の修理受付。 三つを合わせた待ち時間は、前回より短くなっていた。 こ… 読む UPDATE 8月20日|百年後へ残す記録 深夜、アークドームの記録室では、アークシティ全体の長期保管記録が最終確認を迎えていた。 都市が現在の姿になってから積み重ねてきた設計、生活、契約、判断。 今夜保存される記録は、百年間編集されない。 百年後、この都市を管理する人が読む。 作業… 読む UPDATE 8月19日|帰り道の責任 アークドームの一室で、黒崎玲は夜間支援業務の契約書を開いていた。 食料と生活用品の受け渡しは、午後十時四十分まで。 担当者が帰るための最終車両は、午後十時三十分。 仕事が終わるより先に、帰りの車両が出る。 玲は時刻を二度確認した。 「帰りは… 読む UPDATE 8月18日|締め切りのあとに来る人 午後六時、アークドームのコンコースで、動線見直しの意見受付が終了した。 紫藤澪は集計端末を抱え、閉じた受付台の前に立っていた。 回答数は十分。昼間に混雑する通路、案内が見えにくい曲がり角、立ち止まりやすい出入口。改善案を作るための材料は揃っ… 読む UPDATE 8月17日|どこから聞くか 記録室の壁面に、一本の音声記録が開かれていた。 黒崎玲は、再生位置を少し戻した。 設備利用の条件を決めた、古い会議の記録だった。 音声そのものは、すでに保存されている。話者も時刻も確認できる。 今回決めるのは、市民が検索したとき、どの部分か… 読む UPDATE 8月16日|届いたことと、分かったこと 都市観測解析室に、短い照会が届いた。 外縁搬入区の通行量が急に下がっている。異常か。 赤嶺凪は眼鏡を直し、同じ区画の記録を開いた。 確認できることは一つだった。 午後から、観測された通行量が普段より少ない。 原因は分からない。 実際に通る人… 読む