港湾区からネオン地区にかけて、人の流れが少しずつ外へ押し出されていく。
事故を防ぐための制限は、やがて暮らしそのものの形を変えはじめる。
そのとき問われるのは、都市を守ることと、人を消さないことが本当に両立できるのか、という一点だった。
澪が言う。
「これ、隔離に近い」
仁は答える。
「危険を削っている」
玲はスクリーンに映る街を見ていた。
そこには無数の生活がある。
帰り道がある。
予定がある。
まだ戻れるはずの人がいる。
「都市は残さなければならない」
仁が言う。
玲は返す。
「人は?」
「迷えば、事故になる」
仁の声は揺れない。
玲はゆっくり息を吐いた。
都市を止めるためにいるわけではない。
だが、人を消すためにいるわけでもない。
「澪」
「うん」
「まだ間に合うか」
澪は画面を見て、短く頷いた。
「たぶん。完全には無理でも、戻せるところはある」
仁が一歩進む。
「やめろ」
玲は振り向かない。
ただ、言う。
「揺らぎを背負う」
