今回の一言
「年収の壁」とは、収入が一定額を超えることで、税金や社会保険の負担・扱いが変わる境目のことです。
そして一番大切なのは、
年収の壁は、一つではありません。
導入
昨日、「扶養には税金と社会保険の二種類がある」と聞いた澪が、スマートフォンを見ながら首をかしげていた。
澪
「凪先生。『年収の壁』を調べたら、いろんな金額が出てきました」
凪
「はい。制度改正もあるので、昔の記事と現在の記事で数字が違うこともあります」
澪
「結局、何万円まで働けばいいんですか?」
凪
「そこから考えると混乱します」
「まず、何の壁なのかを分けて考えましょう」
仁
「税金の話なのか。社会保険の話なのか。最初にそこを確認する」
基本のキ
① そもそも「年収の壁」って何?
凪
例えば、パートやアルバイトで働いている人の年収が増えていくとします。
ある金額を超えたところで、
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自分に税金がかかる
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家族が受けている税の控除が変わる
-
社会保険に自分で加入する
-
健康保険の扶養から外れる
といった変化が起こることがあります。
こうした境目を、一般に**「年収の壁」**と呼んでいます。
澪
「一つの制度に一つの壁があるわけじゃないんですね」
凪
「その通りです」
② 税金の壁は?
凪
2026年分では、給与収入だけでほかに所得がない人の場合、年収178万円以下なら原則として所得税等はかかりません。
澪
「昔は『103万円の壁』ってよく聞きましたよ?」
凪
「税制改正によって基準が変わっています」
2026年度税制改正では、基礎控除や給与所得控除などが見直され、原則として2026年分の所得税から新しい制度が適用されます。
澪
「じゃあ、昔覚えた金額をそのまま使わない方がいいんですね」
凪
「はい。税制は変わるので、いつの制度なのかを見ることが大切です」
③ 「106万円の壁」って何?
凪
こちらは税金ではなく、社会保険の話です。
2026年8月現在、一定規模以上の会社で働く短時間労働者は、
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週20時間以上
-
学生ではない
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月額賃金8万8,000円以上
などの条件を満たすと、勤務先の健康保険・厚生年金へ加入する対象になります。
月額8万8,000円を年収にすると、およそ106万円になるため、「106万円の壁」と呼ばれてきました。
ただし――
この賃金要件は2026年10月に撤廃される予定です。
澪
「じゃあ、106万円という数字は、もうすぐ壁ではなくなるんですか?」
凪
「そうです。今後は年収よりも、週20時間以上働くかどうかなどが重要になっていきます」
④ 「130万円の壁」って何?
澪
「130万円もよく聞きます」
凪
「こちらも社会保険の扶養に関係する数字です」
一般的には、家族の健康保険の被扶養者でいるためには、年間収入130万円未満などの収入要件があります。
この基準を超えて扶養から外れると、自分で健康保険や年金の保険料を負担することになる場合があります。
澪
「だから手取りが大きく変わることがあるんですね」
凪
「はい。そのため130万円は、税金の壁より強く意識されることがあります」
ただし、年齢や働き方などによって条件には例外があります。
例えば、配偶者を除く19歳以上23歳未満の人については、被扶養者認定の年間収入要件が150万円未満へ引き上げられています。
⑤ 壁を超えたら、必ず損するの?
澪
「じゃあ、壁を超えないように働いた方がお得なんですか?」
凪
「必ずしもそうではありません」
例えば社会保険へ加入すると、給料から保険料が引かれるため、加入直後には手取りが減ることがあります。
一方で、
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将来受け取る厚生年金が増える
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病気やけがで仕事を休んだ場合に傷病手当金の対象になる
-
出産で休業した場合に出産手当金の対象になる
など、保障も増えます。
さらに、働く時間や時給が増えれば、壁を超えても最終的な収入そのものが増える場合があります。
仁
「『壁を超えた瞬間だけ』を見て判断するな。その後いくら働き、どんな保障を得るのかまで見る必要がある」
⑥ じゃあ、何を確認すればいい?
澪
「数字がいっぱいあって、やっぱり難しいです」
凪
「三つだけ覚えてください」
まず確認すること
① 税金の話?
自分の所得税や、家族の控除に関係します。
② 社会保険の話?
自分が健康保険・厚生年金へ加入するか、家族の扶養に入れるかに関係します。
③ いつの制度?
税金や社会保険の基準は改正されます。
澪
「『私は何万円まで?』より先に、『何の制度?』なんですね」
凪
「それが一番大切です」
よくある勘違い
「年収の壁は一つだけ」
凪
違います。
税金、社会保険、扶養など、制度ごとに基準があります。
「103万円を超えると急に大損する」
2026年現在、昔から知られてきた「103万円」という数字だけで働き方を判断するのは適切ではありません。
2026年分の所得税では、給与収入だけでほかに所得がなければ、178万円以下なら原則として所得税等はかかりません。
「106万円を超えたら必ず社会保険に入る」
これも単純ではありません。
2026年8月時点では、勤務先の規模、週の労働時間、学生かどうかなど、複数の条件があります。また、月額8万8,000円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。
「壁を超える=損」
仁
「負担が増えるだけなら壁だ。だが、収入も保障も増えるなら話は変わる」
凪
目先の手取りだけでなく、
収入・社会保険料・将来の年金・保障
まで含めて考える必要があります。
今日のまとめ
📌 年収の壁は一つではない
📌 税金の壁と社会保険の壁は別物
📌 2026年分では、給与だけなら178万円以下で原則として所得税等はかからない
📌 いわゆる106万円の壁は社会保険の話で、賃金要件は2026年10月に撤廃予定
📌 130万円の壁は、主に社会保険の扶養に関係する
📌 壁を超えると負担が増える場合があるが、保障や収入も増える
📌 「何万円?」より先に、「何の制度?」を確認する
今日の一言
玲
「数字だけを見ると壁に見えます。その向こうで何が変わるのかを見ることが大切です」
この回のポイント
年収の壁とは?
一定の年収を境に、税金や社会保険などの扱いが変わること。
2026年8月時点で覚えたいこと
178万円
→ 給与だけでほかに所得がない人の所得税に関係する基準。
約106万円
→ 短時間労働者の社会保険加入で使われてきた目安。
→ 賃金要件は2026年10月に撤廃予定。
130万円
→ 社会保険の扶養に関係する代表的な基準。
一番大切なこと
税金の壁 ≠ 社会保険の壁
「年収○万円」だけを覚えるのではなく、何の制度の数字なのかを確認する。
よくある勘違い
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年収の壁は一つだけ → 違う
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今も103万円だけ見ればいい → 違う
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106万円を超えれば全員が同じ扱い → 違う
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壁を超えれば必ず損 → 違う
