今回の一言
裁量労働制とは、仕事の進め方や時間配分を大きく本人に任せ、実際に何時間働いたかではなく、あらかじめ決めた時間を働いたものとして扱う制度です。
導入
昨日、フレックスタイム制について聞いた澪が、また求人情報を眺めていた。
澪
「凪先生。今度は『裁量労働制』って書いてあります」
凪
「昨日のフレックスタイム制とは、似ているようでかなり違う制度です」
澪
「どちらも自分で働く時間を決めるんですよね?」
凪
「フレックスは主に始業・終業時刻を自分で調整する制度です。裁量労働制は、それに加えて、仕事の進め方や時間の配分そのものを大きく本人に任せることが前提になります」
仁
「自由な出勤時間というだけでは、裁量労働制にはならない」
基本のキ
① 裁量労働制って何?
凪
仕事によっては、
「朝9時から、この順番でこの作業をしてください」
と細かく指示するより、
どのように仕事を進めるか
どこに時間をかけるか
を本人に任せた方が適している場合があります。
そうした一定の仕事について使われるのが、裁量労働制です。
制度が適用されると、実際に働いた時間そのものではなく、
あらかじめ決めた時間を働いたものとみなす
という扱いをします。
澪
「『みなす』ってどういうことですか?」
凪
「例えば『1日8時間働いたものとする』と決めているなら、実際の勤務時間とは別に、労働時間の計算上は8時間として扱う、という考え方です」
② 例えば6時間で仕事が終わったら?
澪
「8時間と決めていて、6時間で仕事を終えたらどうなるんですか?」
凪
「裁量労働制の対象として適切に運用されていれば、労働時間の計算上は、あらかじめ決めた8時間働いたものとして扱います」
澪
「じゃあ、逆に10時間かかったら?」
凪
「その場合も、基本的には定められた8時間を働いたものとして扱います」
澪
「実際に働いた時間とは違うんですね」
凪
「そこが裁量労働制の大きな特徴です」
③ じゃあ、会社は実際の労働時間を見なくていい?
澪
「8時間とみなすなら、実際に何時間働いたかは会社が知らなくてもいいんですか?」
凪
「そうではありません」
裁量労働制でも、長時間労働によって健康を損なわないようにする必要があります。
制度には、労働者の健康や福祉を確保するための措置などが求められています。
仁
「『みなし8時間』と書けば、実際に12時間、14時間働いていても放っておいてよい、という制度ではない」
④ 誰でも裁量労働制にできるの?
澪
「会社が『今日から全社員、裁量労働制です』って決められますか?」
凪
「できません」
裁量労働制には対象となる業務が定められています。
大きく分けると、
専門業務型裁量労働制
専門性が高く、仕事の進め方や時間配分を本人の裁量に大きく委ねる必要がある一定の業務。
企画業務型裁量労働制
企業の事業運営に関する企画・立案・調査・分析などのうち、制度の条件を満たす業務。
の2種類があります。
澪
「職種の名前だけで何でも対象になるわけではないんですね」
凪
「はい。実際にどんな業務をしているかも重要です」
⑤ フレックスタイム制とは何が違うの?
澪
「ここがまだ少し混ざります」
凪
「では並べてみましょう」
フレックスタイム制
労働者が、
何時に仕事を始めるか
何時に仕事を終えるか
を一定の範囲で決めます。
ただし、実際に働いた時間を計算します。
裁量労働制
始業・終業だけではなく、
仕事をどう進めるか
どの仕事にどれくらい時間を使うか
についても本人の裁量が大きいことが前提です。
労働時間については、
あらかじめ決めた時間を働いたものとみなします。
澪
「なるほど。フレックスは実際の時間を数えるけど、裁量労働制は『みなし時間』を使うんですね」
凪
「それが大きな違いです」
⑥ 裁量労働制なら残業代は出ないの?
澪
「よく『裁量労働制だと残業代が出ない』って聞きます」
凪
「そう言い切るのは正確ではありません」
例えば、みなし労働時間そのものが法定労働時間を超えている場合には、時間外労働に関するルールが関係します。
また、
深夜労働
や
法定休日労働
についての割増賃金のルールも、裁量労働制だからなくなるわけではありません。企画業務型について厚生労働省も、休憩・法定休日・深夜業の割増賃金の規定は原則どおり適用されると説明しています。
澪
「『裁量労働制=残業代ゼロ』ではないんですね」
仁
「みなし労働時間と、割増賃金のルールを混同するな」
⑦ 本人が嫌でも適用されるの?
澪
「対象の仕事なら、会社から言われたら必ず裁量労働制になるんですか?」
凪
「現在の制度では、対象労働者本人の同意も重要です」
裁量労働制については2024年4月から制度の手続きが改正され、専門業務型・企画業務型ともに、適用にあたって本人の同意などが必要となる仕組みが整えられています。
澪
「会社が対象業務だと言えば、それだけで決まる制度ではないんですね」
凪
「そうです。対象業務、手続き、本人の同意など、条件があります」
よくある勘違い
「裁量労働制=好きな時間に出勤できる制度」
凪
それだけではありません。
始業・終業時刻だけでなく、仕事の進め方や時間配分にも大きな裁量があることが制度の重要な特徴です。
「裁量労働制なら誰にでも使える」
違います。
対象となる業務が法律上限定されています。
「裁量労働制なら残業代は一切出ない」
これも違います。
深夜労働や法定休日労働などの割増賃金のルールまでなくなるわけではありません。
「みなし8時間なら、本当に何時間働いても問題ない」
凪
違います。
裁量労働制でも、労働者の健康や福祉を守るための措置が必要です。
今日のまとめ
📌 裁量労働制では、仕事の進め方や時間配分を本人に大きく任せる
📌 実際の労働時間ではなく、あらかじめ決めた時間を働いたものとみなす
📌 裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」がある
📌 誰にでも自由に適用できる制度ではない
📌 フレックスは実際に働いた時間を計算する
📌 裁量労働制だから残業代がすべてなくなるわけではない
📌 深夜労働や法定休日労働の割増賃金のルールも残る
📌 「みなし時間」だから実際の長時間労働を無視していいわけではない
今日の一言
玲
「任される自由が大きいほど、その自由を支えるルールも必要になります」
この回のポイント
裁量労働制とは?
仕事の進め方や時間配分を本人に大きく任せ、あらかじめ決めた時間を働いたものとして扱う制度。
例えば
みなし労働時間が、
1日8時間
なら、
実際の勤務が制度上6時間や10時間だったとしても、基本的には8時間働いたものとして扱う仕組みです。
どんな種類がある?
専門業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制
の2種類があります。
フレックスタイム制との違い
フレックスタイム制
→ 始業・終業時刻を自分で調整
→ 実際の労働時間を計算する
裁量労働制
→ 仕事の進め方・時間配分も本人に大きく任せる
→ 決められた時間を働いたものとみなす
残業代は?
「裁量労働制だから一切出ない」は誤り。
深夜労働や法定休日労働などについては、割増賃金のルールが適用されます。
誰でも対象?
いいえ。
対象となる業務や導入手続きが定められています。
よくある勘違い
-
裁量労働制=フレックス → 違う
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好きな時間に働くだけの制度 → 違う
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全社員に自由に適用できる → 違う
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残業代が全部なくなる → 違う
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実際の長時間労働は関係ない → 違う
