今回の一言
事業場外みなし労働時間制は、会社の外で働き、しかも実際の労働時間を算定することが難しい場合に使われる制度です。
導入
昨日、「みなし労働時間」について聞いた澪が、営業職の求人を見ていた。
澪
「凪先生。外回りの営業なら、事業場外みなし労働時間制になるんですよね?」
凪
「外回りだから、自動的にそうなるわけではありません」
澪
「会社の外で働く制度なのに?」
凪
「大切なのは、もう一つあります。実際の労働時間を算定することが難しいかどうかです」
仁
「『社外にいる』ことと、『働いた時間が分からない』ことは別だ」
基本のキ
① 事業場外みなし労働時間制って何?
凪
例えば営業職などでは、
会社を出て、
-
顧客を訪問する
-
移動する
-
商談する
-
そのまま直帰する
といった働き方があります。
その中でも、会社が実際の労働時間を正確に算定することが難しい場合に、一定の時間を働いたものとして扱う仕組みが、
事業場外みなし労働時間制
です。
労働基準法では、事業場外で働き、労働時間を算定し難い場合、原則として所定労働時間働いたものとみなすとされています。
澪
「昨日の『みなし労働時間制』の一つですね」
凪
「そうです」
② 外回りなら全部みなしになるの?
澪
「でも営業で外に出ていたら、会社からは見えませんよね?」
凪
「今は、外にいるだけで時間が分からないとは限りません」
例えば、
-
上司と常に連絡を取りながら働いている
-
訪問先や訪問時間が細かく決められている
-
労働時間を管理する人と一緒に行動している
など、会社が勤務状況を具体的に把握できるなら、労働時間を「算定し難い」とはいえない場合があります。
澪
「外にいるかではなく、時間を把握できるかなんですね」
凪
「そこが一番重要です」
③ スマホを持っていたら、みなしにはならない?
澪
「じゃあ、会社のスマホを持っていたら駄目ですか?」
凪
「スマホを持っているだけで決まるわけでもありません」
現在は通信手段が発達しているため、
どのような指示を受けているのか
どの程度勤務状況を把握できるのか
などを、具体的に見て判断します。
最高裁判例を踏まえた厚生労働省の整理でも、業務の内容、指示・報告の方法など、個々の勤務の事情を見て「労働時間を算定し難いか」を判断する必要があるとされています。
仁
「通信機器があるかないか、一点だけで決まる問題ではない」
④ 何時間働いたものとみなすの?
澪
「制度が使える場合、何時間として計算するんですか?」
凪
「基本は、会社で決められている所定労働時間です」
例えば、
所定労働時間が1日8時間
なら、原則として、
8時間働いたものとみなす
という考え方です。
澪
「実際に7時間だったとしても?」
凪
「対象となる事業場外労働については、原則8時間として扱うことになります」
⑤ 本当は毎日10時間くらい必要な仕事なら?
澪
「でも、その仕事を普通にやったら10時間かかるのに、所定労働時間が8時間だったら?」
凪
「その場合は、単純に8時間とみなすとは限りません」
その事業場外の仕事を行うために、通常、所定労働時間を超えて働く必要がある場合には、
その仕事を行うために通常必要となる時間
を働いたものとして扱います。
例えば、
所定労働時間 8時間
でも、
その外勤業務には通常10時間必要
なら、
10時間をみなし時間とする場合があります。
澪
「会社が何でも8時間扱いにできるわけではないんですね」
仁
「制度の名前を使って、実態から離れた時間を自由に設定できるわけではない」
⑥ 10時間みなしなら、残業代は?
澪
「10時間働いたものとみなすなら、8時間を超えた2時間はどうなるんですか?」
凪
「法定労働時間を超える部分については、通常の時間外労働と同じように扱います」
例えば、みなし労働時間が1日10時間なら、
8時間を超える2時間
については、36協定や割増賃金のルールが関係します。
厚生労働省も、法定労働時間を超えるみなし時間を設定する場合には、36協定と時間外割増賃金が必要になると説明しています。
澪
「『みなし』になったら残業代がなくなるわけではないんですね」
凪
「その通りです」
⑦ テレワークでも使われるの?
澪
「会社の外なら、自宅のテレワークも対象になるんですか?」
凪
「条件を満たせば、対象になる場合があります」
自宅で働いていても、
事業場外で働いている
そして、
労働時間を算定することが難しい
という条件を満たせば、事業場外みなし労働時間制を利用できる場合があります。
ただし、
常時オンラインで具体的な指示を受けながら働いているなど、会社が勤務状況を把握できる場合には、適用できるとは限りません。
澪
「在宅勤務だから自動的にみなしになるわけでもないんですね」
凪
「はい。外回りと同じで、実際の働き方を見ます」
よくある勘違い
「外回り営業なら全部みなし労働」
凪
違います。
事業場外で働くだけでなく、労働時間を算定することが難しいことが必要です。
「会社の外にいれば労働時間は分からない」
これも違います。
訪問予定、指示、報告、勤務管理などによって、実際の労働時間を把握できる場合があります。
「みなしになれば全部8時間扱い」
これも違います。
業務を行うために通常、所定労働時間を超える時間が必要なら、通常必要となる時間をみなす場合があります。
「みなし労働なら残業代はいらない」
凪
違います。
みなし時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働や割増賃金のルールが関係します。
今日のまとめ
📌 事業場外みなし労働時間制は「社外で働く+労働時間の算定が難しい」場合の制度
📌 外回り営業だから自動的に対象になるわけではない
📌 会社が実際の勤務時間を把握できる場合には、対象にならないことがある
📌 原則として所定労働時間働いたものとみなす
📌 通常それ以上の時間が必要な仕事なら、「通常必要な時間」をみなす場合がある
📌 みなし時間が法定労働時間を超えれば、残業代のルールも関係する
📌 テレワークでも、条件を満たせば対象になる場合がある
今日の一言
玲
「会社の外にいるから時間が消えるのではありません。時間を測ることが本当に難しいかが問われます」
この回のポイント
事業場外みなし労働時間制とは?
会社の外で働き、実際の労働時間を算定することが難しい場合に、一定時間働いたものとして扱う制度。
外回りなら全部対象?
いいえ。
ポイントは、
外で働いているか
だけではなく、
実際の労働時間を算定できるか
です。
基本は何時間?
原則として、
所定労働時間
を働いたものとみなします。
通常もっと時間が必要なら?
その業務を行うために、
通常必要となる時間
を働いたものとみなす場合があります。
残業代は?
みなし労働=残業代なし
ではありません。
みなし時間が法定労働時間を超えれば、時間外割増賃金のルールが関係します。
テレワークは?
条件を満たせば、事業場外みなし労働時間制を利用できる場合があります。
よくある勘違い
-
外回り営業=全部みなし → 違う
-
社外なら時間は把握できない → 違う
-
みなしなら必ず8時間 → 違う場合がある
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みなしなら残業代なし → 違う
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テレワークなら自動的にみなし → 違う
