今回の一言
変形労働時間制とは、忙しさに合わせて日ごとの労働時間を変えながら、一定期間を平均して週40時間以内などに収める制度です。
導入
昨日、シフト勤務について聞いた澪が、勤務表を見ながら不思議そうな顔をした。
澪
「凪先生。この勤務表、ある日は10時間勤務になっています」
凪
「はい」
澪
「1日8時間を超えたら残業じゃなかったんですか?」
凪
「原則はそうです。ただし、一定の条件を満たした変形労働時間制では、あらかじめ10時間勤務と決められた日なら、8時間を超えた部分がすぐ法定時間外労働になるとは限りません」
澪
「そんな仕組みがあるんですね」
仁
「ただし、『好きな日に長く働かせていい制度』ではない」
基本のキ
① 変形労働時間制って何?
凪
通常の労働時間は、原則として、
1日8時間・週40時間
までです。
でも仕事によっては、
月末はすごく忙しい
その代わり月の途中は暇
といった差があります。
そこで、一定の条件を満たせば、
忙しい日は長めに働く
代わりに、
別の日は短くする、または休日を増やす
ことで、一定期間全体では法定労働時間の範囲に収める仕組みがあります。
これが変形労働時間制です。
② 1日10時間でも残業じゃないことがあるの?
澪
「そこが一番気になります」
凪
「例えば、1か月単位の変形労働時間制で考えてみましょう」
会社があらかじめ、
月曜日 10時間勤務
火曜日 6時間勤務
などと労働時間を決めています。
そして、1か月などの対象期間を平均して、原則として週40時間以内になるよう設計します。
この条件を満たして適切に制度を導入していれば、あらかじめ10時間勤務と定めた日に10時間働いても、8時間を超えた2時間が直ちに法定時間外労働になるわけではありません。
澪
「8時間というルールがなくなったわけではなく、期間全体で組み替えているんですね」
凪
「その理解が大切です」
③ じゃあ10時間を超えたら?
澪
「最初から10時間勤務の日に、11時間働いたら?」
凪
「その場合は話が変わります」
例えば、変形労働時間制で、
その日は10時間勤務
とあらかじめ決められていたなら、
10時間を超えた部分
は時間外労働になります。
逆に、
8時間勤務と決められていた日
に10時間働けば、原則として8時間を超えた部分が時間外労働になります。
澪
「その日の予定が何時間だったのかも重要なんですね」
④ 月末に調整すれば何でもいい?
澪
「じゃあ、忙しい日に好きなだけ働いて、月末に休ませて平均40時間以内にすればいいんですか?」
凪
「それは違います」
変形労働時間制では、原則としてあらかじめ各日・各週の労働時間を決めておく必要があります。
実際に働かせたあとで、
「今月は長く働いたから、最後に休ませて平均を合わせよう」
と自由に調整する制度ではありません。
仁
「先に働かせて、あとから帳尻を合わせるための制度ではない」
⑤ シフト勤務とは何が違うの?
澪
「昨日のシフト勤務と似ていますよね?」
凪
「似ていますが、別の話です」
シフト勤務
誰が、いつ働くかを勤務表で決める働き方
変形労働時間制
法律上の労働時間を、一定期間の中で配分する制度
です。
シフト勤務だから、自動的に変形労働時間制になるわけではありません。
澪
「シフトで10時間勤務と書いてあれば、何でも残業にならないわけではないんですね」
凪
「その通りです。変形労働時間制を適切に導入しているかどうかが重要です」
⑥ どんな種類があるの?
凪
主なものには、
-
1か月単位の変形労働時間制
-
1年単位の変形労働時間制
-
1週間単位の非定型的変形労働時間制
などがあります。
また、労働者が一定の範囲で始業・終業時刻を自分で決めるフレックスタイム制もあります。
例えば、
1か月単位
なら、月の中で忙しい日と暇な日の勤務時間を調整する。
1年単位
なら、季節によって忙しさが大きく変わる仕事などで、年間を通して勤務時間を配分する。
という使われ方があります。
⑦ 会社が勝手に導入できるの?
澪
「会社が『来月から変形労働時間制です』って言えば始められるんですか?」
凪
「好きなように始められるわけではありません」
制度によって、
-
就業規則への定め
-
労使協定
-
労働基準監督署への届出
など、必要な手続きがあります。
仁
「8時間・40時間という原則の例外を使う以上、条件と手続きがある」
よくある勘違い
「1日8時間を超えたら、必ず残業」
凪
原則は1日8時間ですが、適切に導入された変形労働時間制では、あらかじめ8時間を超える勤務を定めた日について、その定めた時間までは法定時間外労働にならない場合があります。
「変形労働時間制なら何時間でも働ける」
違います。
期間全体の法定労働時間の枠がありますし、決められた時間を超えて働けば時間外労働になる場合があります。
「最後に平均40時間になればいい」
これも違います。
原則として、事前に労働日と労働時間を定めておくことが必要です。
「シフト勤務なら自動的に変形労働時間制」
凪
違います。
シフト勤務と変形労働時間制は別の仕組みです。
今日のまとめ
📌 労働時間は原則1日8時間・週40時間
📌 変形労働時間制では、忙しさに合わせて勤務時間を配分できる
📌 条件を満たせば、1日8時間を超えても法定時間外労働にならない日がある
📌 ただし、あらかじめ勤務時間を定める必要がある
📌 決められた時間を超えれば、時間外労働になる場合がある
📌 あとから平均だけ合わせればよい制度ではない
📌 シフト勤務と変形労働時間制は別物
今日の一言
玲
「長く働く日だけを見るのではなく、その時間がどう組まれているのかを見ることです」
この回のポイント
変形労働時間制とは?
忙しい日を長く、別の日を短くするなどして、一定期間全体で労働時間を調整する制度。
原則は?
1日8時間
週40時間
です。
10時間勤務でも残業じゃない?
適切な変形労働時間制で、
あらかじめ10時間勤務の日
と定められていれば、その10時間までが直ちに法定時間外労働になるとは限りません。
11時間働いたら?
10時間と定めた日なら、
10時間を超えた部分
は時間外労働になります。
大切なこと
あとから平均を合わせるのではない。
原則として、事前に各日の労働時間を決めておく必要があります。
シフト制との違い
シフト制
→ いつ働くかを勤務表で決める
変形労働時間制
→ 労働時間を一定期間の中で配分する法律上の制度
よくある勘違い
-
8時間を超えたら必ず残業 → 例外がある
-
変形労働時間制なら長時間労働し放題 → 違う
-
月末に平均を合わせればいい → 違う
-
シフト制=変形労働時間制 → 違う
