今回の一言
法定労働時間を超えて働いた場合は、原則として通常の1時間分の賃金に25%以上を上乗せした割増賃金が必要です。
導入
昨日、36協定について聞いた澪が、給与明細の「時間外手当」を見ていた。
澪
「凪先生。残業代って、残業した時間に時給を掛ければいいんですよね?」
凪
「基本の考え方は近いですが、法律上の時間外労働には割増があります」
澪
「よく聞く『25%増し』ですね」
凪
「はい。ただし、定時を過ぎた時間が全部25%増しになるとは限りません」
仁
「まず、その残業が法律上の『時間外労働』なのかを見る」
基本のキ
① 残業代はどう計算するの?
凪
まず一番簡単な形で考えます。
例えば、通常の1時間分の賃金が1,500円だったとします。
法定時間外労働なら、原則25%以上の割増が必要なので、
1,500円 × 1.25 = 1,875円
となります。
2時間の法定時間外労働なら、
1,875円 × 2時間 = 3,750円
という考え方です。
澪
「残業時間だけ、いつもの1時間分より高くなるんですね」
凪
「そうです」
② 定時を超えたら、全部25%増し?
澪
「じゃあ、定時を1時間過ぎたら25%増しですよね?」
凪
「必ずしもそうではありません」
例えば会社の勤務時間が、
9時~17時
休憩1時間
実働7時間
だったとします。
17時から18時まで働けば、会社の定時は超えています。
でも実働はまだ8時間です。
法律上の1日8時間を超えていないので、この1時間は原則として法定時間外労働ではありません。
澪
「会社では残業でも、法律上の25%増しとは限らないんですね」
凪
「はい。会社の規定で別の扱いをしている場合はありますが、法律上の割増を見るならそこを分けます」
③ 1日8時間を超えたら?
凪
例えば、
実働8時間まで勤務
したあと、さらに2時間働いたとします。
この2時間は原則として法定時間外労働です。
通常の1時間分の賃金が1,500円なら、
1,500円 × 1.25 × 2時間
という考え方になります。
澪
「昨日の『1日8時間・週40時間』がここにつながるんですね」
凪
「その通りです」
法定労働時間を超えて働かせた場合には、原則25%以上の割増賃金が必要です。
④ 夜遅く働いたらどうなるの?
澪
「夜中まで残業したら、同じ25%増しですか?」
凪
「午後10時から午前5時までの労働には、深夜労働として25%以上の割増があります」
さらに、その時間が法定時間外労働でもある場合、
時間外25%以上
+ 深夜25%以上
なので、
合計50%以上の割増
になります。
澪
「残業と深夜が重なると、割増も重なるんですね」
⑤ 休日に働いたら?
凪
法定休日に働いた場合には、原則として35%以上の割増賃金が必要です。
さらに法定休日の勤務が午後10時から午前5時までにかかれば、
休日35%以上
+ 深夜25%以上
で、
60%以上の割増
になります。
澪
「でも、前に『会社が休みの日なら全部35%』ではないって習いましたよね」
凪
「よく覚えています。35%以上になるのは、法律上の法定休日労働の場合です」
⑥ 残業がものすごく多くなったら?
凪
1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、割増率がさらに上がります。
現在は企業規模にかかわらず、
50%以上
の割増賃金が必要です。
澪
「25%のままずっと増えていくわけではないんですね」
仁
「長時間働かせるほど、会社側の負担も重くなる仕組みだ」
⑦ 「1時間分の賃金」は基本給だけ?
澪
「計算するときは、基本給だけを時給に直せばいいんですか?」
凪
「必ずしも基本給だけではありません」
割増賃金の基礎には、原則として通常の労働時間に支払われる賃金を使います。
月給制の場合は、対象となる月給を1か月の平均所定労働時間で割って、1時間当たりの賃金を求めます。
ただし、
-
家族手当
-
通勤手当
-
一定の住宅手当
-
臨時に支払われる賃金
など、法律上、一定の条件で計算から除外されるものがあります。
澪
「単純に基本給だけ割ればいいとは限らないんですね」
凪
「はい。実際の給与計算では、給与明細や会社の賃金規程を確認する必要があります」
よくある勘違い
「定時を過ぎたら全部25%増し」
凪
違います。
会社の所定労働時間を超えていても、法律上の法定労働時間を超えていない場合があります。
「残業代は普通の時給と同じ」
法定時間外労働では、原則として25%以上の割増が必要です。
「固定残業代があれば、何時間残業しても追加なし」
これも違います。
固定残業代でカバーされる額を超える割増賃金が発生した場合には、差額を支払う必要があります。
「残業代は基本給だけで計算する」
凪
これも一律には言えません。
割増賃金の基礎に含める賃金と、法律上除外できる賃金があります。
今日のまとめ
📌 法定時間外労働は原則25%以上の割増
📌 定時を超えた時間が、すべて25%増しになるとは限らない
📌 午後10時~午前5時の深夜労働は25%以上の割増
📌 法定休日労働は35%以上の割増
📌 法定時間外+深夜なら50%以上
📌 月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増
📌 残業代の計算は、基本給だけで決まるとは限らない
今日の一言
玲
「同じ一時間でも、いつ、どれだけ働いた一時間なのかで、その重さは変わります」
この回のポイント
法定時間外労働の残業代
基本の考え方は、
1時間当たりの賃金
× 1.25以上
× 法定時間外労働の時間
です。
割増率の基本
法定時間外労働
→ 25%以上
深夜労働(22時~翌5時)
→ 25%以上
法定休日労働
→ 35%以上
月60時間を超える時間外労働
→ 50%以上
重なると?
時間外+深夜
→ 50%以上
法定休日+深夜
→ 60%以上
注意
会社の定時を超えた残業
と
法律上の法定時間外労働
は同じとは限りません。
よくある勘違い
-
定時を過ぎれば全部25%増し → 違う
-
残業代は普通の時給と同じ → 違う
-
固定残業代なら追加の残業代は一切ない → 違う
-
基本給だけで残業代を計算する → 一律には言えない
