STORY / BLACK VELOCITY

BLACK VELOCITY: Civil Threshold Episode 5 一つの都市に、三つの正しさ

仁は、第七区画のことを詳しく語らない。

語れば、切り離したはずの時間が、自分の中でまた動き出すからだ。

それでも、彼の結論だけは変わらない。

「削る」

玲は受け止めるように言う。

「背負う」

澪は二人のあいだで、その言葉を聞いていた。
制度でも理念でもなく、壊れた現場に触れてきた者の位置から。

「ねえ。都市を守るって、何を守ること?」

仁は答える。

「存続だ」

玲は静かに返した。

「都市は人のためにある」

「人の迷いが、都市を壊す」

「それでも、人を消すための都市ではない」

視線が交わる。

どれも、間違いとは言い切れない。
だからこそ、厄介だった。

都市は一つしかない。
その一つの都市に、三つの正しさがある。

玲は、制度の中で人を消させない。
澪は、現場でこぼれたものを拾う。
仁は、次の破局を通さないために止める。

三つは、きれいには重ならない。