仁は、第七区画のことを詳しく語らない。
語れば、切り離したはずの時間が、自分の中でまた動き出すからだ。
それでも、彼の結論だけは変わらない。
「削る」
玲は受け止めるように言う。
「背負う」
澪は二人のあいだで、その言葉を聞いていた。
制度でも理念でもなく、壊れた現場に触れてきた者の位置から。
「ねえ。都市を守るって、何を守ること?」
仁は答える。
「存続だ」
玲は静かに返した。
「都市は人のためにある」
「人の迷いが、都市を壊す」
「それでも、人を消すための都市ではない」
視線が交わる。
どれも、間違いとは言い切れない。
だからこそ、厄介だった。
都市は一つしかない。
その一つの都市に、三つの正しさがある。
玲は、制度の中で人を消させない。
澪は、現場でこぼれたものを拾う。
仁は、次の破局を通さないために止める。
三つは、きれいには重ならない。
