今回の一言
休日に出張先へ移動して前泊しても、移動中に特別な仕事を命じられず、自由に過ごせるのであれば、その移動時間は労働時間にならない場合があります。
導入
月曜日の朝から遠方で仕事をすることになった澪が、日曜日の新幹線を予約していた。
澪
「凪先生。日曜日に大阪まで移動して前泊するんですけど、これって休日出勤ですよね?」
凪
「必ずしもそうではありません」
澪
「でも会社の仕事があるから、休日に移動するんですよ?」
凪
「そうですね。ただ、法律上の労働時間になるかどうかは、休日を使ったかどうかだけでは決まりません」
仁
「見るべきなのは、その移動中に仕事を命じられていたかどうかだ」
基本のキ
① 前泊って何?
凪
前泊とは、
翌日の仕事に備えて、前日に出張先へ移動して宿泊すること
です。
例えば、
月曜日 朝9時から大阪で会議
でも、東京から当日の朝に向かうと間に合わない。
そこで、
日曜日に大阪へ移動
↓
ホテルに宿泊
↓
月曜日に仕事
という形です。
澪
「日曜日は本来休みなのに、仕事のために使うことになりますね」
凪
「そう感じるのは自然です。ただし、法律上の『休日労働』になるかは別に考えます」
② 日曜日に移動したら休日出勤?
澪
「休日に会社のために移動するなら、仕事じゃないんですか?」
凪
「移動だけなら、労働時間にならない場合があります」
厚生労働省が示している事例では、
仕事日の前日にあたる休日に、自宅から直接出張先へ移動して前泊する時間
について、
-
移動中に仕事の指示を受けない
-
仕事をしない
-
移動中の時間を自由に使える
といった場合は、労働時間に該当しない例として示されています。
澪
「休日を使っているのに、法律上は休日出勤にならないことがあるんですね」
③ 新幹線で寝ていてもいいなら?
凪
例えば日曜日に新幹線で移動するとします。
その間、
-
寝てもいい
-
本を読んでもいい
-
動画を見てもいい
-
自分の好きなように過ごせる
-
仕事をするよう命じられていない
のであれば、単なる出張の移動として、労働時間にならない場合があります。
澪
「会社のための移動でも、時間そのものを自由に使えるかがポイントなんですね」
凪
「はい」
出張の移動時間については、会社の指揮命令下に置かれているかどうかが基本的な判断基準になります。
④ 移動中に仕事を命じられたら?
澪
「じゃあ新幹線で、『明日の資料を完成させておいて』と言われたら?」
凪
「話が変わります」
例えば、
-
パソコンで資料を作る
-
オンライン会議に参加する
-
メール対応をする
-
商品や重要物品を監視する
などを会社から命じられている場合です。
その時間は自由に使えません。
こうした場合は、実態に応じて労働時間として扱う必要があります。
仁
「休日の移動かどうかより、移動中に仕事をしているかを見る」
⑤ 会社の荷物を運んでいたら?
澪
「会社の商品や重要な荷物を持って移動する場合は?」
凪
「単に自分の荷物を持っている場合とは違います」
例えば、
商品の運搬そのものが仕事
だったり、
移動中も荷物を監視するよう命じられている
のであれば、その移動時間が労働時間になる場合があります。
厚生労働省も、物品の監視を命じられた出張や、物品を運搬すること自体が目的の出張などは、実態に応じて労働時間として扱うべきとしています。
澪
「同じ新幹線移動でも、任されている仕事が違えば扱いも変わるんですね」
⑥ 自分で車を運転して前泊したら?
澪
「会社から『車で行ってください』と言われた場合は?」
凪
「自分で運転する場合も注意が必要です」
会社の指示によって自動車を運転して移動する場合、
運転中は自由に寝たり読書したりできません。
その運転が業務として義務付けられているのであれば、労働時間に該当する場合があります。
仁
「新幹線の乗客と、業務として車を運転する者を同じには扱えない」
⑦ 労働時間になったら休日手当が付く?
澪
「休日の移動が労働時間になったら、35%増しですか?」
凪
「ここはさらに一つ確認が必要です」
35%以上の休日割増が必要になるのは、原則として法定休日に労働した場合です。
つまり、
会社が休みの日に働いた=必ず35%増し
ではありません。
その日が、
法定休日なのか
それとも、
会社が設けた法定外休日なのか
によって扱いが変わります。
澪
「前に勉強した『休日と休暇』『祝日』の話につながりますね」
凪
「そうです」
⑧ 前泊のホテル代や交通費は?
澪
「労働時間じゃないなら、新幹線代やホテル代も自腹ですか?」
凪
「それは別の話です」
労働時間かどうか
と、
出張費を誰が負担するか
は別です。
会社の指示による出張なら、会社の旅費規程などに基づいて、
-
新幹線代
-
飛行機代
-
ホテル代
-
出張日当
などが支給・精算されることがあります。
澪
「『労働時間ではない=出張費も出ない』ではないんですね」
凪
「その通りです」
⑨ 日当をもらったら休日労働になる?
澪
「じゃあ、休日の移動日に日当が出たら、その日は仕事扱いですか?」
凪
「日当が支給されたからといって、それだけで労働時間になるわけではありません」
日当は、昨日勉強したように、出張に伴う負担などについて会社が支給するものです。
一方、
その時間が労働時間なのか
は、
会社の指揮命令下に置かれていたか
などから判断します。
仁
「金が支給されたかどうかだけで、労働時間は決まらない」
よくある勘違い
「休日に前泊すれば必ず休日出勤」
凪
違います。
自由に過ごせる単なる出張移動なら、休日の移動であっても労働時間にならない場合があります。
「会社命令の出張なら移動時間は全部仕事」
これも一律ではありません。
出張そのものが会社の指示でも、移動中に仕事をせず、自由利用が保障されている時間は労働時間にならない場合があります。
「移動中に仕事をしても単なる移動」
これは違います。
会社から資料作成や物品の監視などを命じられている場合は、労働時間になることがあります。
「休日に働けば全部35%増し」
凪
違います。
35%以上の休日割増が必要になるかは、その日が法定休日かどうかも確認します。
今日のまとめ
📌 休日に前泊しても、自動的に休日出勤になるわけではない
📌 自由に過ごせる単なる出張移動は、労働時間にならない場合がある
📌 判断の基本は、会社の指揮命令下に置かれているか
📌 移動中に仕事を命じられれば、労働時間になる場合がある
📌 商品の運搬・監視が仕事なら、単なる移動とは違う
📌 会社の指示による運転も、労働時間になる場合がある
📌 労働時間になっても、35%増しになるかは法定休日かどうかで変わる
📌 労働時間でなくても、交通費・宿泊費・日当が支給されることはある
今日の一言
玲
「休日を使ったかではなく、その時間を自分のものとして使えたかを見ることです」
この回のポイント
前泊とは?
翌日の仕事に備えて、前日に出張先へ移動して宿泊すること。
休日に移動したら休日出勤?
必ずしもそうではありません。
移動中に仕事を命じられず、自由に過ごせる場合には、労働時間にならないことがあります。
労働時間になるのは?
例えば、
-
移動中に資料作成を命じられる
-
オンライン会議へ参加する
-
商品を運搬する
-
重要物品を監視する
-
会社の指示で自動車を運転する
などの場合です。
35%増しになる?
労働時間になっただけでは決まりません。
法定休日に働いたかどうか
も確認します。
出張費は?
労働時間にならなくても、
-
交通費
-
宿泊費
-
日当
などが会社から支給される場合があります。
覚え方
休日に移動した?
ではなく、
移動中、その時間を自由に使えた?
を見る。
よくある勘違い
-
休日の前泊=必ず休日出勤 → 違う
-
会社命令の出張=移動も全部労働時間 → 違う
-
移動中の仕事も単なる移動 → 違う
-
休日の労働=必ず35%増し → 違う
