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出張先のホテルで仕事をしたら、残業になるの?――仕事をする場所ではなく、「会社の指示で働いていたか」を見る――2026/09/16 四人で学ぶ、キホンのキ

四人で学ぶ、キホンのキ
出張先のホテルで仕事をしたら、残業になるの?――仕事をする場所ではなく、「会社の指示で働いていたか」を見る――2026/09/16 四人で学ぶ、キホンのキ

今回の一言

出張先のホテルでも、会社の指示で日報を書いたり資料を作ったりしていれば、その時間は労働時間になる場合があります。


導入

出張先での仕事を終えた澪が、ホテルの部屋でパソコンを開いた。

「凪先生。会社から『今日の日報を寝る前に送ってください』って連絡が来ました」

「では、これから日報を書くんですね」

「でもホテルに戻った後ですよ。勤務時間は終わっていますよね?」

「場所がホテルだからといって、仕事ではなくなるわけではありません」

「見るべきなのは場所ではない。誰の指示で、何をしている時間なのかだ」


基本のキ

① ホテルで仕事をした時間も労働時間?

労働時間かどうかを判断する基本は、

会社の指揮命令下に置かれているか

です。

会社から明確に指示されている場合だけでなく、実際には仕事をせざるを得ないような黙示の指示がある場合も含まれます。

厚生労働省も、使用者の明示または黙示の指示によって業務をしている時間は、労働時間に当たるとしています。

「会社の建物にいるかどうかではないんですね」

「そうです。ホテルでも、自宅でも、移動中でも基本的な考え方は同じです」


② 日報を書いていたら?

「じゃあ、『今日の日報をホテルで作って送って』と言われた場合は?」

「労働時間になると考えられます」

厚生労働省は、まさに出張先の宿泊施設について、

その日の活動を日報にまとめて報告する必要がある場合

など、会社から作業を義務付けられている時間は労働時間に該当すると示しています。

「ホテルに戻ってからでも、会社から必要な作業を求められていれば仕事なんですね」


③ 明日の資料を作った場合は?

「翌朝の会議資料を、ホテルで仕上げる場合はどうですか?」

「これも同じです」

会社から、

明日の会議までに完成させること

を求められていて、ホテルで作業せざるを得ないのであれば、その作業時間は労働時間になる場合があります。

厚生労働省も、翌日の活動に必要な資料を出張先で作成することを求められているケースを、労働時間に該当する例として挙げています。

「仕事を持ち帰る場所が、自宅からホテルへ変わっただけなら、本質は変わらない」


④ 自分の判断で少し仕事をしたら?

「会社から何も言われていないけど、自分から明日の資料を整理した場合は?」

「そこは状況によります」

完全に本人の自由な判断で、

やってもやらなくても仕事に影響せず、会社も求めていない

のであれば、直ちに労働時間になるとは限りません。

一方で、

  • 仕事量から見てホテルで作業しないと終わらない

  • 上司がホテルで作業していることを知っている

  • 定時外の作業を事実上当然としている

などの場合には、会社の黙示の指示による業務と判断される可能性があります。

「『自分で勝手にやった』という形だけでは決まらないんですね」

「実際の働き方から判断します」


⑤ 定時後なら全部「残業代25%増し」?

「ホテルで定時後に仕事をしたら、全部25%増しですか?」

「ここは分けて考えます」

例えば会社の所定労働時間が、

実働7時間

だったとします。

その日に7時間働いた後、ホテルでさらに1時間仕事をして、

合計8時間

になった場合。

会社の定時は超えていますが、原則として法律上の1日8時間はまだ超えていません。

つまり、

会社でいう残業

ではあっても、

法定時間外労働

とは限りません。

「前に勉強した『所定労働時間と法定労働時間』ですね」

「そうです」


⑥ 1日8時間を超えたら?

例えば、その日すでに8時間働いたあと、

ホテルでさらに2時間、会社の指示で資料を作ったとします。

原則として、この2時間は法定時間外労働になります。

法定時間外労働には、原則として25%以上の割増賃金が必要です。

また、法定時間を超えて働かせるには、原則として36協定も必要になります。

「ホテルで働いた時間も、一日の合計に入れて考えるんですね」

「その通りです」


⑦ 夜10時を過ぎたら?

「資料を作っていたら夜10時を過ぎた場合は?」

「22時から翌5時は、深夜労働の時間帯です」

この時間には、原則として25%以上の深夜割増が必要です。

さらに、その時間が法定時間外労働でもあれば、

時間外25%以上
+ 深夜25%以上

で、

50%以上の割増

となります。

「ホテルの照明の下でも、22時を過ぎれば深夜労働のルールは同じだ」


⑧ 「ホテルでは仕事禁止」と言われていたら?

「会社から『ホテルでは仕事をしないでください』と言われているのに、自分で仕事をしたら?」

「その場合も、実態を見ます」

本当に会社が業務を禁止し、

  • 仕事量も勤務時間内で終えられる

  • 定時後の作業を求めていない

  • 上司も時間外作業を認識していない

のであれば、会社の指揮命令下にあるとは言いにくくなります。

ただし表向きは「残業禁止」と言いながら、

実際には翌朝までに大量の資料を完成させることを求めている

のであれば、単純に「会社は禁止していた」で終わるとは限りません。

「書いてあるルールだけではなく、実際に何を求められていたかを見るんですね」


⑨ ホテルで仕事をした時間は、どう記録する?

会社には労働時間を適正に把握する責務があります。

ホテルでの作業でも、

  • 業務日報

  • パソコンの使用記録

  • 社内システムへのアクセス

  • メール送信時刻

  • ファイルの更新記録

などから、実際に作業していた時間を確認できる場合があります。

厚生労働省も、出張先のホテルでの作業を確認する資料として、こうした記録を挙げています。

「職場の外で働けば、労働時間の記録まで消えるわけではない」


よくある勘違い

「ホテルに戻った後は全部プライベート」

違います。

ホテルでも会社の指示で仕事をしていれば、労働時間になる場合があります。


「日報くらいなら仕事ではない」

これも違います。

会社から日報の作成・提出を求められているなら、その作業時間は労働時間になると考えられます。


「定時を過ぎたら全部25%増し」

これも違います。

会社の所定労働時間を超えたことと、法律上の法定労働時間を超えたことは同じとは限りません。


「自分から仕事をしたら絶対に労働時間ではない」

これも一律には言えません。

会社がその作業を事実上求めていた、あるいは黙認していたなど、実際の状況によって判断されます。


今日のまとめ

📌 出張先のホテルでも、会社の指示で働けば労働時間になる

📌 日報作成や翌日の資料作成を求められている時間は、労働時間になり得る

📌 判断基準は「ホテルかどうか」ではなく「会社の指揮命令下にあるか」

📌 明示的な指示だけでなく、黙示の指示による仕事もある

📌 定時後の仕事が全部25%増しになるとは限らない

📌 1日8時間・週40時間を超える法定時間外労働なら、原則として割増賃金が必要

📌 22時~翌5時なら深夜割増も関係する

📌 ホテルでの作業時間も、適切に把握・記録する必要がある


今日の一言

「仕事をする場所が変わっても、その時間が仕事だったという事実は変わりません」


この回のポイント

ホテルで仕事をしたら?

会社の指示で必要な仕事をしていれば、労働時間になる場合があります。

例えば?

日報を作る

翌日の資料を作る

メール対応をする

オンライン会議に出る

など。

会社から義務付けられている作業なら、労働時間に該当すると考えられます。

定時後なら残業?

会社でいう残業にはなり得ます。

ただし25%以上の法定割増が必要かどうかは、

1日8時間・週40時間などの法定労働時間を超えたか

を確認します。

夜10時を超えたら?

22時~翌5時

は深夜労働。

原則として25%以上の深夜割増が必要です。

法定時間外労働と重なれば、

50%以上の割増

となります。

自分から仕事をした場合は?

一律には決まりません。

本当に任意だったのか、会社が事実上求めていたのかなど、実際の状況から判断します。

労働時間の記録は?

ホテルでの仕事でも、

  • PCの利用記録

  • メール

  • 日報

  • 社内システムのアクセス

  • ファイル更新履歴

などが確認材料になります。

よくある勘違い

  • ホテル=仕事ではない → 違う

  • 日報作成は労働時間ではない → 違う場合がある

  • 定時後=全部25%増し → 違う

  • 自主的にやった仕事=絶対に労働時間ではない → 一律には言えない