WORLD / BLACK VELOCITY

アークシティとは何か

BLACK VELOCITY 都市設定 第1回

『BLACK VELOCITY』の物語は、
近未来都市アークシティを舞台にしています。

空には公共交通が走り、
都市の各所では人の移動や設備の状態が管理され、
巨大な都市機能が互いにつながりながら動いている。

けれど、アークシティは、
ただ便利で美しい未来都市として作った街ではありません。

この街の根にあるのは、

都市は、人を守るためにどこまで人を管理してよいのか。

という問いです。

今回は、『BLACK VELOCITY』の舞台である
アークシティの基本像を紹介します。


アークシティは「独立実験都市」である

アークシティは、
一つの国が建設した都市ではありません。

複数の国家、企業、研究機関が共同で建設した、
独立性の高い実験都市です。

その目的は、
新しい技術を試すことだけではありません。

交通。

エネルギー。

医療。

防災。

都市運営。

人々の生活を支えるさまざまな仕組みを接続し、
巨大な都市を継続して動かすこと。

そのための制度そのものも、
アークシティでは実験の対象になっています。

つまりこの街は、

未来の建物が並ぶ都市ではなく、
未来の都市運営を試している場所

でもあります。


管理されている。だが、自由を捨ててはいない

アークシティでは、
都市の存続に直結する機能が強く管理されています。

重力炉。

都市演算。

基幹インフラ。

交通。

防災。

大規模事故への対応。

こうした都市の命綱を、
完全な市場原理や個人の自由だけに委ねることはありません。

一方で、
市民の日常生活まで一つの意思で完全に支配する都市でもありません。

人は働き、買い物をし、食事をし、
文化を楽しみ、自分の生活を選ぶことができます。

アークシティが目指しているのは、

秩序を守りながら、個人の選択を窒息させないこと。

けれど、それは簡単ではありません。

安全を強く求めれば、自由は狭くなる。

自由を広く認めれば、
制度が予測できない選択も増えていく。

アークシティは、
その矛盾を解決した都市ではありません。

むしろ、その矛盾を抱えたまま運営されている都市です。


都市の中では、すべてが少しずつつながっている

アークシティでは、
一つの設備だけを見ても、街の全体像は分かりません。

交通が止まれば、
通勤だけでなく、医療や物流にも影響が出る。

設備障害が起これば、
建物の機能だけでなく、人の避難経路も変わる。

一つの区画を安全のために閉じれば、
別の場所に人や物資が集中する。

この街では、

設備の問題と、人の暮らしの問題を完全に分けることができません。

だからこそ、『BLACK VELOCITY』では、

制度を見る者。

現場を見る者。

危険を前に止める者。

異常の兆候を読む者。

異なる立場の人間が必要になります。

誰か一人が、
都市のすべてを正しく見ることはできないからです。


完成された理想都市ではない

アークシティには、
優れた技術があります。

高度な公共交通があります。

強い防災制度があります。

事故や重大判断を検証する仕組みもあります。

しかし、
それでも事故は起こりました。

制度があっても、
判断が正しくても、
複数の判断が噛み合わなければ、人は帰れなくなる。

そのことを、
アークシティは第七区画事故によって知りました。

事故のあと、都市は変わりました。

以前より安全を重視するようになった。

危険への対応も厳しくなった。

判断を記録し、
後から検証する仕組みも強化された。

けれど同時に、
以前より少し息苦しい都市にもなりました。

安全のために閉じる。

事故を防ぐために止める。

記録のために残す。

それらは必要です。

しかし、必要な制度が、
人を押し潰すことはないのか。

『BLACK VELOCITY』は、
その境界を描く物語でもあります。


アークシティは、物語の背景ではない

私にとってアークシティは、
登場人物たちが活動するための背景ではありません。

この都市そのものが、
作品の問いを抱えています。

守るために止めること。

まだ戻れるものを見捨てないこと。

判断の結果だけでなく、
そこにいた人を記録から消さないこと。

完全な自由もない。

完全な管理もない。

その間で揺れながら、
都市と人が何を選ぶのか。

それが、
アークシティという街です。

そして『BLACK VELOCITY』は、
この街の中で生きる人々の選択を描いていきます。


次回

アークシティは誰が動かしているのか

次回は、市民代表議会、都市運営局、基幹評議会という三つの層を中心に、
この巨大都市がどのような仕組みで運営されているのかを紹介します。